夏の皮膚トラブルに!日本生まれの万能外用薬「紫雲膏」

夏の皮膚トラブルに!
日本生まれの万能外用薬「紫雲膏」

隠れた名常備薬『紫雲膏(しうんこう)

香港在住の薬剤師・国際中医師の林 三貴です。『紫雲膏(しうんこう)という軟膏をご存知でしょうか?我が家では「困った時の紫雲膏!」とでも言うが如く頻用しており、香港生活を始める際にも、わざわざ日本から帯同した外用薬です。
当時、子どもが小さく、切り傷、肌荒れなどが絶えなかった我が家では本当にお世話になっておりました。

火傷した友人に、紫雲膏を勧めると、跡が残らずきれいに治ったと大喜びしてもらったこともありますし、シミっぽいイボにとりあえず塗ってみたら、半月もしないうちに消えてしまったという喜びの声もありました。

これからの暑い季節や、プールの時期になると、お子様の水いぼにお悩みの方が多くいらっしゃると思います。以前、お子様の水いぼへの使用を勧めたことがあり、程なくしてきれいに治癒したので非常に喜ばれたことがあります。
水いぼは伝染性軟属腫といって、主に子どもがかかるウイルス性皮膚感染症で、90%以上は1年以内に自然治癒すると言われています。

痒みが出て、掻きむしったために悪化することもあるので、通常は皮膚科の受診をおすすめするのですが、皮膚科では、水いぼをピンセットでつまみとるという治療が主流で、非常な激痛を伴うため、子どもはホントに嫌がります。大きく広範囲に広がった水いぼは皮膚科での受診をお勧めしますが、水いぼかも?ってタイミングでの使用ならアリかもしれません。

それくらい「ほんと紫雲膏、マジすごい!!」なのですが、おそらく一般的なご家庭では知名度の低い塗り薬ではないでしょうか?

【注意】 使用される場合は、パッチテストなどでアレルギー反応が出ないかご確認の上お試しください。

紫雲膏の知名度はなぜ低いのか

まずは紫雲膏の見た目です。強烈な赤紫色で、オイリーであることは塗らずともわかります。

そして、臭い。腐っているわけではないのですが、少し動物っぽい臭いです。慣れれば臭いは気にならないですし、ずっと塗った場所が臭うわけではないのですけどね。

シミにいいと話題に

これからの季節の肌のお悩みの代表とも言える「シミ」。夏の紫外線のダメージで濃くなるシミは、実に女性の約8割が悩んでいると聞きます。

数年前、日本のテレビ番組で、女性のお肌のトラブルを救った生薬として、紫雲膏に配合されている“紫根(シコン)”が紹介され『紫雲膏』が市場から消えたということもありました。覚えていらっしゃる方も多いでしょう。

確かに紫雲膏に含まれる紫根には、肌のターンオーバーを正常化し、メラニン色素を古い角質と一緒に排出するという作用があるので、シミやくすみを防ぐようですが、紫雲膏は、その色が寝具に付いたりと、使い勝手もよくないのでお勧めしません。

紫雲膏の使用を考えてらっしゃる場合は、紫根入りの化粧品の方が良いかと思います。

紫雲膏は何に効く?

多くの皮膚トラブルに対応

紫雲膏は、江戸時代の名医・華岡青洲(はなおかせいしゅう)が創案した歴史ある漢方製剤で、古くから皮膚疾患や外科的疾患の治療薬として重用されてきました。現在も日本のほとんどの薬局で売られています。

湿疹、水虫、魚の目、たこ、イボ、ニキビ、あせも、かぶれ、 虫刺され、しもやけ、切り傷、擦り傷、ひび・あかぎれ、やけど等

挙げればキリがないほど多くの効能があり、皮膚のトラブルに幅広く活躍できる、なんとも使い勝手も効き目もよい軟膏であると言えます。

紫雲膏は何からできている?

紫雲膏は、紫根、当帰(トウキ)、ゴマ油、ミツロウ、豚脂の5種類の生薬から構成されています。 これらの生薬の組み合わせが、抗菌、消炎、鎮痛、そして皮膚の再生機能を促進して患部をきれいに治します。

紫雲膏の向き不向き

とても万能な外用薬ではあるのですが、分泌物が多くて化膿していたり、年月が経っている患部には不向きです。

また、軟膏の特徴的な赤紫色は、ムラサキの根っこである紫根から抽出された色素なのですが、紫根は万葉集でも詠まれるほど歴史があり、古代から衣類の染料として用いられてきました。
染料ゆえに、やはり色がつくと落ちにくいため、塗布する場合は衣服などにつかないよう注意しなければなりません。(でも、すぐ肌に吸収されます。)

紫雲膏は日本の漢方製剤?

私自身、紫雲膏は日本の漢方製剤と思っていましたので、日本から持参しましたが、香港でも自家製の紫雲膏が、薬店や日用雑貨店などで売られているのをよく見かけます。香港に来て間もない頃、紫雲膏を発見した時はホントにびっくりしました。

オリジナルは中国、明の時代に陳実功(ちんじつこう)が著した『外科正宗(げかせいそう)』にある「潤肌膏(じゅんきこう)」と呼ばれるものですが、潤肌膏は固くて使いにくかったため、豚脂を加えて肌馴染みを良くしたものが紫雲膏です。なのでメイドインジャパンと言って良いでしょう。
潤肌膏については、香港のクリニックでもよく処方されているようですよ。

では薬店や雑貨屋の「紫雲膏」ですが、成分を見ると豚脂抜きの「潤肌膏」です。なのに何故か「紫雲膏」として売られています。日本の紫雲膏が受け入れられているからかもしれないですね。
香港製は、主成分にラベンダーやカモミール、ミントなど鎮静成分が加えられ使いやすく加工していることが多いようです。

香港のホームメイド紫雲膏

写真の2種、色の違いにびっくりしますが、使用感もかなり違い、黒い方はザラザラしています。

先日、赤い方の紫雲膏を作っている店舗を訪れてみました。残念ながら、紫雲膏作りは見学できませんでしたが、植物からの抽出エキスの瓶をたくさん見せて頂きました。綺麗なルビー色の液体に癒されましたね。

こちらの紫雲膏は綺麗な色に加えて使用感も良く、こちらを知ってからは日本製を購入し無くなりました。もちろん!効き目も日本製に引けをとりません!!
香港では購入できないと思い、わざわざ日本で購入していた紫雲膏ですが、香港メイドの製品が買えるのは嬉しい限りです。

ご家庭にひとつあると大変便利な塗り薬だと思います。夏の皮膚トラブルを未然に防ぐためにも、常備されることおすすめします。

この記事を書いた人

林三貴

薬剤師、国際中医師
おうち漢方@香港を主催
薬学部卒業後、製薬会社、調剤専門薬局を経て、現代医学にない漢方の世界観、自然哲学に魅せられ漢方専門薬局へ。2008年国際中医師免許を取得する。 主に婦人科系疾患を担当し、女性の悩みに耳を傾け症状改善を手がける。 2012年香港に移住。現地で漢方カウンセリング、漢方レッスンを開講する。 漢方養生茶、よもぎ蒸し、経絡トリートメントを取り入れた漢方カウンセリングでは、現代医学、現代栄養学の見解も併せ、養生法を提案。現地日本人の健康サポートを行う。 オンラインでのカウンセリングも実施しており、香港のみならず日本の方にも、本場香港からの漢方の智慧をお届けできればと思っている。

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