発酵食品のとりすぎに注意?!新たな腸の病気SIBO

発酵食品のとりすぎに注意?!新たな腸の病気SIBO

KAMPO LAB薬剤師・薬学博士の鹿島絵里です。現代科学と漢方医学の両方の視点で、健康・美容の最前線に迫ります。

発酵食品に食物繊維、オリゴ糖など、腸活のために積極的に摂っている人も多いと思います。しかし良かれと思って食べているこうした食品によって、却って体調を崩すのではないかと危惧されている疾患があります。SIBO(Small intestinal bacterial overgrowth) (シーボ)と呼ばれる疾患です。

SIBOとは

主にお腹の張り、ガス、下痢、腹部の膨張、消化不良などの症状を訴える疾患です。

日本語名は「小腸内細菌異常増殖症」といい、難しいようですが読んでそのままの意味です。つまり小腸で細菌が異常増殖している病気です。「腸内」細菌というくらいですから、大腸にも小腸にも細菌たちはいてしかるべきなのですが、その数が問題です。

多くの場合、腸内細菌というと大腸にいる細菌たちを話題にしています。しかし口腔から肛門に至るまでの消化管の中で、大腸だけでなくすべての場所に細菌たちは存在しています。そこには細菌数の濃淡があり、酸性度の高い胃ではとても少なくなっているという具合です。

さてこの胃から消化管を先に進むと、十二指腸、空腸、回腸に区分される小腸があり、その先に大腸、そして肛門へとつながります。小腸は6〜7mもの長さがありますから、その上流と下流ではやはり様子が違います。小腸の前の胃は、酸性度が高く細菌数が少ない部位です。一方、小腸の後ろの大腸は、体中でもっとも細菌数の多い場所。これらをつなぐ小腸ですから、胃に隣接する十二指腸は細菌が少なく、より下流の空腸、回腸では細菌が増えてくるというのが健全な細菌数のグラデーションです。しかしSIBOではこの絶妙なグラデーションを無視して、小腸内で細菌たちが増えすぎてしまっているのです。

SIBOは同じく腸の疾患である過敏性腸症候群と併発していることが多く、またSIBOの症状はいずれも誰しもが経験したことのあるありふれた症状で、なかなか発見してもらえなかったり、苦しいという訴えもかるく流されてしまうケースさえあります。

お腹の張り
ガス
下痢
腹部の膨張
消化不良など

SIBOの診断

現在SIBOの診断方法は主に2通りあり、ひとつは十二指腸や空腸から直接サンプルを採取して細菌数を数える方法、もうひとつは呼気に含まれる水素やメタンを検出して判定する方法です。前者のほうが確実な診断方法と言われていますが、患者の体に負担がかかる、特殊な器具および技術が必要などの理由から、呼気から診断する方法が多く採用されているようです。

SIBOを引き起こす要因

疾患と手術

小腸で細菌を異常増殖させてしまう原因は小腸の酸性度の低下ですが、これを引き起こすものに種々の疾患や腹部の手術があります。

過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、消化不良、酒さ、レストレスレッグス症候群、小腸憩室、膵炎、甲状腺機能低下症、パーキンソン病、糖尿病、冠動脈疾患など
子宮摘出、胃切除、胆嚢切除、大腸切除など

胃薬に注意

さらに、SIBOを悪化させるので注意が必要とされているのが、胃酸の分泌を抑えるタイプの胃薬です。お腹の調子が良くないからという理由で服用されがちですが、SIBOの場合は胃酸の分泌を抑えることでさらに小腸での細菌の増殖を助けてしまいます

プロバイオティクスはとってもいいの?

健康の増進を目的として生きた善玉菌を食品として取り入れること、またその食品そのものをプロバイオティクスと言います。このプロバイオティクスがSIBOのひとにとっては却って悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。腸内細菌の異常増殖という病気ですから、生きた菌を積極的に摂取することは確かにリスクにも見えます。ただし、プロバイオティクスがいいか悪いか、データに基づいた知見となるとこれはまだグレーゾーンのようです。臨床試験として「プロバイオティクスとして何を用いたか、治療期間はどれほどか、評価対象集団などのような人たちか、SIBOの診断方法や基準はどうか」などの事柄を詳細に書き出してみると、一貫性に欠けてしまうのです。つまり有害だという主張も、そうでないという主張も比較することができず、今のところ真偽のほどは確かめられていません。一般的なデータが出ることを待つよりも、自分なりの対処を専門家とともに見出していくのが今できることと言えそうです。

SIBOとFODMAP

プロバイオティクスはグレーゾーン、では食物繊維やオリゴ糖など腸内細菌のエサとなって健康増進に寄与するプレバイオティクスはどうでしょう。やはり控えるべきなのでしょうか。過敏性腸症候群ではFODMAP(フォドマップ)の少ない食事は有効であることが示されています。これは、小腸の細菌が炭水化物やその発酵産物にさらされる機会を減らし、その結果、細菌の増殖を抑制したり、ガス産生を変化させたりするためと考えられています。

fermentable oligosaccharides, disaccharides, monosaccharides, and polyol(発酵性のオリゴ糖、二糖類、単糖類、ポリオール)
の略語。

しかしながら、低FODMAPの食事SIBO患者に有効かは結論が出ていません。巷では「オリゴ糖はとるな」という意見もあれば「環状オリゴ糖はSIBOにいい」という意見があったり、混乱気味です。少なくとも、「体にいいと言われているんだから!」と妄信的にこれらを摂取するのは避けるべきでしょう。
多くの現代人は食物繊維の不足が原因で体調不良を訴えますから、腸活を行うことが健康や美容のメリットとなります。でも万人に当てはまるわけではないことは知っておく必要がありますね。

腸内細菌と人の健康との強い結びつきが明らかになって、まだわずかな時間が経過したばかりです。当然、SIBOという疾患も命名から歴史が浅く、治療法はおろか診断方法さえ議論の最中です。もしSIBOと診断されても、その原因、症状の重さ、罹患の期間など人によってまちまちですから、今わかっていることだけから無理に答えを見つけようとせず、自分の体をよく観察しながら一番いい方法を探し出してほしいと思います。

 

この記事を書いた人

鹿島絵里

株式会社kampo lab菌と生薬の研究家
薬剤師・博士(薬学)
東北大学薬学部を卒業、同大学にて博士(薬学)取得。 研究室で遺伝子と老化の研究をしながら、日々の体調とのリンクが気になり未病を重要視する漢方を学ぶように。 薬日本堂、北里大学東洋医学総合研究所を経て、2020年より漢方薬店kampo’sに所属。 研究リテラシーを生かしながら伝統医療の良さを現代に合わせて発信している。

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