痩せないのは腸内細菌のせい?!

痩せないのは腸内細菌のせい?!

KAMPO LAB薬剤師・薬学博士の鹿島絵里です。現代科学と漢方医学の両方の視点で、健康・美容の情報に迫ります。

腸内フローラや腸活、脳腸相関などなど、腸や腸内細菌にまつわるキーワードをたくさん見聞きするようになりました。腸や腸内細菌の何がそんなに大事なのでしょう。

一言で言ってしまうと「これまでの常識を覆した」んです。腸内細菌たちの存在に気付き、彼らの働きが活発に調べられるようになったのがこの四半世紀ほど。すると立ち込めていた暗雲に次々と光が差し込むように、驚きの発見が続いたのです。

便秘だけじゃなかった腸内細菌と人の体の関係。現在では大きく三つ、代謝疾患(ダイエット)、免疫疾患、精神疾患にそれぞれ腸内細菌が関与していることが明らかになっています。

腸内細菌という臓器

大腸、小腸にいる細菌をまとめて腸内細菌と呼びます。生まれたときから腸内細菌はどんどん増え続け、大人の体でおよそ100兆個、1.5~2kgほどにもなります。

子供と大人では腸内細菌の種類の偏りが大きく違っていて、子供の体には子供のための、大人の体には大人のための腸内細菌のバランスがあるようです。

腸内細菌が「外付け臓器」と呼ばれるのは、人間由来の細胞ではできない様々な生理現象を腸内細菌たちがまかなってくれるから。彼らを無視して健康も美容もないのです。

カロリー計算は無意味?腸内細菌と栄養摂取の関係

有名な実験があります。太った人の腸内細菌をマウスに移植すると、そのマウスは太りました。逆もまたしかり。痩せた人の腸内細菌を移植すると、 マウスの体型はきちんと維持されました。どちらのマウスも同じ食事を与えられて、こうした体型の違いを示したのです。

一方、痩せた人の腸内細菌を移植しても、脂肪の多い食事を与えられたマウスは体型を維持できずに太ってしまいました。

ここから導かれる結論は「摂取したカロリーは同じでも、腸内細菌の違いによって太りやすい・太りにくいの体質の差が生じる」ことと、「高脂肪食では、痩せた人由来の菌が体型維持のために働けていない」ということです。

かつて私たちはカロリーという言葉を信仰(?)してダイエットに励んできました。このカロリー信仰は世界中で行われましたが、肥満問題はまったく解決していません。肥満解消のためには摂取カロリーをただ減らせばいいというわけではなかったのです。

腸内細菌とともに歩んできたことが分かった今、大事なのはいい腸内細菌を持つことと、その腸内細菌たちに適切に働いてもらうこと、です。

花粉症もアレルギーも、腸から治す

もはや国民病ともいえる花粉症食物アレルギーに悩む人も増えています。免疫疾患と表現されるこれらのお悩みですが、その解決のカギは腸内細菌です。もちろんこれだけが原因ではありませんが、腸内細菌を無視して花粉症もアレルギーも完治はありません。

腸は外からの異物(適切な食事で摂取したものもここでは異物です)を受け止めて、必要な成分を腸壁を通して体の中に取り込む重要な役割をしています。間違ったものが入ってきたら即座に身体全体に知らせて排除しなければなりません。このシステムに腸内細菌が関与しています。腸活に取り組んだ結果、「鼻に邪口をつけているようだった」というほど花粉症の鼻炎症状に悩まされていた人が、マスクなしでも平気で外を歩けるようになった例もあります(今は花粉症の有無によらず外出時にはマスクを使ってくださいね)。

花粉症に苦しみながらも、便秘も下痢もないからと腸活に無関係と思っている方!そもそも花粉症のあるなしによらず、腸活に無関係でいられる人はひとりもいません!!お困りの症状がありましたら、腸内環境の改善はマストです。腸活をしたうえで、その他の解決方法を同時に試みましょう。

腸活で性格が変わる?無気力・イライラにも腸内細菌

精神疾患というとその幅は広く、発達に関わることであったり、毎日の気持ちの浮き沈みであったり、本人はもちろん周りの人にも影響を及ぼすものです。

発達と腸内細菌

発達に関してはいくつもの報告があります。1~2歳のころに大量の抗生物質にさらされたことがきっかけで突然振る舞いが異常になり自閉症と診断された例、また、自閉症児の腸内細菌のバランスが健康児のものと異なることなどがわかっています。現在、治療や予防に向けて、腸内細菌の研究や抗生物質の適正使用の啓蒙などが行われています。

性格と腸内細菌

トキソプラズマ感染症

トキソプラズマ原虫に感染すると、性格が変わると言われています。男性は不安で嫉妬深くなり、女性はおおらかで自信家になるといいます。さらに交通事故を起こしやすいという報告もあります。一方でトキソプラズマ感染は精神疾患・能力・人格に何も相関的な変化をもたらさないという意見もあります。

個人の性格や毎日の気持ちの浮き沈みというのは変動の大きな事柄ですから、有意差が得られるまでにデータ化するというのは確かに難しい側面があります。トキソプラズマ原虫と性格の変化の関係の有無はなかなか決着がつかなそうです。

一方で、幸せホルモンの生成に腸内細菌が関わっているとなれば、やっぱり性格や気持ちと腸内細菌に関係があると思いませんか?

幸せホルモン

腸内細菌が免疫と深い関わりがあることはすでにお伝えしましたが、活発化した免疫細胞で消耗されるエネルギーは、幸せホルモンの原料でもあるんです。つまり、腸内細菌の状態が悪く異常な免疫反応を起こしている体では、幸せホルモン原料不足によって十分に生成されなくなってしまうのです。病気で免疫細胞が働いているときもそうです。不安な気持ちになりますよね。人の気持ちを動かす要素は腸内細菌だけではありませんから、正確な数字でデータを出すことが難しい中、これはとても面白い研究だと思います。人の気持ち(脳)が腸に影響を与えるのは理解できますが、腸の方から気持ちに変化を与える例です。

腸活をしなくていい人はいない

「腸活」や「菌活」というと、意識の高い人が健康と美容のためにやることと思われる方も少なからずいらっしゃいますが、決してそうではありません。人と菌はずっとずっと太古の昔から一緒にいました。人ひとりの体を維持するのに、共生する菌の存在は必須です。そのパートナーシップが崩れ始めて、やっとその存在に気付いたのが今と言えます。伝統的な食事が注目されているのは、そこに菌と暮らしてきた歴史が反映されているからですね。

安いこと、便利なことに重きが置かれた時代がひと段落し、伝統的な食事のように手間ひま、コストが多少かかってもカラダにいいものを求める時代に入ります。安くて便利にするための方法は多くの場合、腸内環境を悪いほうへと傾けることでした。それに気付けて良かったと思います。

今はまだ私たちの生活は、腸内環境を悪くする安くて便利な食品を使うことでまわっています。段階を踏みながらではありますが、食事の内容から、はたまた時間の使い方まで、腸活を通して社会全体がいい方向へ進んでほしいと願います。ちょっと飛躍しすぎたでしょうか。でも実際に、腸活とは、自分を、家族を、大切な人を想うことだと信じています。

この記事を書いた人

鹿島絵里

株式会社kampo lab菌と生薬の研究家
薬剤師・博士(薬学)
東北大学薬学部を卒業、同大学にて博士(薬学)取得。 研究室で遺伝子と老化の研究をしながら、日々の体調とのリンクが気になり未病を重要視する漢方を学ぶように。 薬日本堂、北里大学東洋医学総合研究所を経て、2020年より漢方薬店kampo’sに所属。 研究リテラシーを生かしながら伝統医療の良さを現代に合わせて発信している。

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