便秘 〜漢方の教科書〜


\体質を知ってよくしよう/
便秘

便は「毎日必ず出ないといけないもの」と思われがちですが、23日に1回の排便でも、苦痛を感じない場合は便秘といえません。反対に毎日便は出ているものの、苦しさや不快感を感じる場合は便秘と定義されます。

毎日排便はあるもののスッキリしない、スムーズにいかない状態
◎排便は毎日なく、お腹の張りや苦しさ、排便困難で苦痛を感じている状態


 

便秘の種類・漢方ではどう考えるか?

現代医学では便秘を器質性便秘と機能性便秘に分けています。
◎器質性便秘…大腸ポリープや大腸ガンなど、大腸自体に問題があるもの
◎機能性便秘…直腸性便秘
                               (直腸まで便が来ているのに排便を我慢したため、直腸の神経が鈍る)
      …痙攣性便秘
                               (ストレスなどにより自律神経が乱れ、大腸が緊張し、収縮するため)
      …弛緩性便秘
                               (大腸の蠕動運動が低下し、内容物を送り出せないため)

漢方では「実証」と「虚証」の大きく2つに分けて考えます。
1、「実証」とは、体内に余分なものが溜まり過ぎてしまうタイプ
   →身体に熱がこもり、便が乾燥して硬くなったり、ストレスで便通が悪くなるタイプ
2、「虚証」とは、身体に必要なものが不足しているタイプ
   →腸を動かす力が足りなかったり、腸の潤いが足りないタイプ

排便は身体にとって不要となったものを出すこと。そのため、便秘が長引くと、頭痛、歯痛、口臭、吐き気、皮膚炎などの自家中毒症状を引き起こすこともあります。さらには大腸ガンのリスクも上がります。便通を保つことは非常に大切なため、早めに対策をとって排便できる身体作りをしましょう。


 

便秘のタイプ別養生

1,身体に余分な熱がこもっているタイプ

【熱ごもり】
熱を生みやすい食生活

チェック

□便が乾燥して硬い
□便が臭い
□口内炎や口臭が気になる
□辛いものや油っこいものをよく食べる
□怒りっぽい、すぐカッとしてしまう

ポイント

身体に余分な熱がこもり、腸内の潤いが不足している状態。辛いもの・こってりした味付けのものが好きで、お酒をよく飲む方にも多く見られます。まずは食生活の改善を心がけましょう。

養生

油っこいものは控え、食事の味付けはさっぱりしたものにしましょう
香辛料やにんにく、ニラ、ねぎなど香りの強い食材は避けましょう

おすすめ食養生

バナナ、アロエ、きゅうり、もやし、トマト、豆腐、こんにゃく、ごぼう、ドクダミ茶、緑茶で身体の熱を冷ましましょう

 

2,ストレスタイプ

【気滞】
気の巡りの悪さ

チェック

□お腹の張りや膨満感がある
□ゲップやガスが多い
□便秘と下痢を繰り返す
□緊張しやすい、気を張りやすい
□イライラしやすい


ポイント

“気”の巡りが悪く、スムーズに便が出ない状態。ストレスを感じやすく、緊張から気が滞ることで、腸の動きが悪くなってしまうタイプ。旅先で便秘になる人にも多く見られます。適度に身体を動かし、ストレス発散を心がけましょう。


養生

ストレスを上手に発散させましょう
ストレッチ、ヨガ、気功などで、身体を伸ばして気を巡らせましょう


おすすめ食養生

大根、かぶ、キャベツ、シソ、そば、柑橘、ジャスミン茶、玫瑰花で巡りの良い身体を作りましょう

 

3,パワー不足タイプ

【気虚・陽虚】
腸を動かす力や温める力が不足
チェック

□便が出にくい
□排便後に息切れや疲労感がある
□脱肛
□食欲がない、少食
□季節問わず、寒がり、冷え症

ポイント

腸を動かす力や温める力が不足し、腸の働きが低下している状態。胃腸が弱い人、虚弱体質、加齢、病後の人に多く見られます。胃腸に負担をかけないように、消化に良いものを食べるように心がけましょう。

養生

生もの、冷たいものは避けましょう
腹巻やレッグウォーマーを身につけ、特に下半身は温めるようにしましょう

おすすめ食養生

生姜、フェンネル、シナモン、山椒、胡桃で身体を温めましょう

 

4,潤い不足タイプ

【血虚・陰虚】
身体の潤いである“陰血”が不足
チェック

□コロコロ便
□便の匂いはあまり臭くない
□めまい、立ちくらみ、貧血気味
□白髪、抜け毛、細毛
□月経量が少ない、閉経している

ポイント

身体の潤いである“陰血”が不足し、腸を潤せず乾燥している状態。加齢、月経後、産後、閉経した人に多く見られます。辛いものはなるべく避け、潤いを養うものを食べるようにしましょう。

養生

汗のかき過ぎに気を付けましょう
夜は早めに寝ましょう(理想は23時、遅くても0時までに)

おすすめ食養生

ごま、ナッツ類、プルーン、蜂蜜、いちじく、ヨーグルト、ほうれん草、白菜で潤いを養いましょう

 


まとめ

便秘改善には、まず規則正しい生活を送ることが大切です。

食生活の面で、極端な食事制限やダイエットをしている人は、もちろん便は出にくくなります。反対に暴飲暴食や休みなく食べ物を食べ続けることも便秘の原因となります。食事は腹8分、夜は早めに寝て、休日はきちんとストレス発散する、身体を動かすという、規則正しい生活を心がけるようにしましょう。

便が出そうで出ない!という時のおすすめは、按腹(お腹のマッサージ)です。お腹の皮膚表面を撫でるのではなく、その内側の内臓を揉むようにマッサージをしましょう。方向は「の」の字を描くように。併せて、仙骨あたりをトントン叩いて響かせる方法も良いですよ。

漢方の先生

小林香里

国際中医師・国際中医薬膳師・医薬品登録販売者
20代に過労とストレスで身体をこわしたことを契機に、北京中医薬大学日本校にて中医学と薬膳を学び始める。
薬日本堂(株)にて漢方相談、社員教育、スクール講師等、約13年を経て、2017年に独立。
夫婦で漢方薬店と鍼灸院を併設する漢方鍼灸「和氣香風かきこうふう」を東京自由が丘にオープン。
漢方相談をメインに、セミナー講師としても活動している。
著書:「温めもデトックスも いつもの飲み物にちょい足しするだけ!薬膳ドリンク」(薬日本堂監修/河出書房新社)
監修:「あなたにぴったりの漢方薬絵ずかん」(株式会社学研プラス)

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「漢方」をもっとよく知ろう!

2000年以上前の古代中国で生まれた中医学。 それが日本に伝わり、
独自の発展を遂げた日本漢方、韓国においては韓方。
それぞれの国で伝統医学が存在しています。 歴史が長い分、
多くの理論や考え方が派生しています。

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